理工学部 化学?生命理工学科
教授 竹口 竜弥
電気化学、触媒工学、環境科学
岩手大学理工学部竹口竜弥教授らの研究グループは、エネルギー密度が現行のリチウムイオン電池の数倍に達する次世代リチウム空気二次電池において、難分解性放電生成物Li?O?が、レドックスメディエーターと触媒の両方を用いることにより易分解化できることを明らかにしました。
本成果により、高容量化(1.0→4.0 mAh cm??)、エネルギー効率の向上(63.4→74.4%)を達成しました。
本研究成果は、2023年5月17日にThe Journal of Physical Chemistry Cに掲載されました。
リチウム空気二次電池は、正極活物質として空気中の酸素を用い、負極には金属リチウムを用いるため、理論重量エネルギー密度が現行のリチウムイオン電池の数倍に達する次世代二次電池です。このため、軽量性が重視されるドローン、電気自動車など、幅広い分野への応用が期待されています。しかし、放電中に生成するLi?O?の分解には高い充電電圧が必要でエネルギー効率が悪く、そのサイクル寿命は 10 回以下であり、実用化に向けて課題となっています。
Li?O?の分解を促進するために、これまでカーボンブラックなどの炭素に担持された金属触媒が使用されてきましたが、カーボンペーパーなどに担持できる単位面積当たりの炭素量は多くても1.0 mg cm??であり、Li?O?の生成場が限られているため、実際の容量は高くても1.0 mAh cm??にとどまっていました。一方、酸化還元によりLi?O?の分解を促進するレドックスメディエーター(RM)を電解液に溶解させる方法も検討されてきました。
本研究では、国立研究開発法人物質?材料研究機構の開発した単位面積当たりの炭素量が多いケッチェンブラック自立膜を用いることにより実現できた高容量(4.0 mAh cm??)のセルで、LiNO?-LiBr デュアルRM系で触媒の網羅的検討を行い、良好な性能を示した触媒の特徴とその劣化要因を明らかにしました。
酸素還元触媒、酸素発生触媒の技術を次世代二次電池だけでなく、高耐久性固体高分子形燃料電池、水電解に展開し、次世代のエネルギー技術を支える材料開発に取り組みます。
題 目:Performance of Air Electrode Catalysts in the Presence of Redox Mediators for High-Capacity Li?O? Batteries
著 者:Hidenobu Wakita (脇田 英延?理工学部 特任教授), Rina Awata(粟田 理奈?理工学専攻), Yoshino Maita (米田 淑能?理工学部 技術補佐員), Tatsuya Takeguchi (竹口 竜弥?理工学部 教授)
誌 名:The Journal of Physical Chemistry C
公表日:2023年5月17日
DOI :
https://doi.org/10.1021/acs.jpcc.3c01224
本研究は、JST先端的低炭素化技術開発(ALCA-SRING JPMJAL1301)の成果の一部として得られました。